top of page

旭川医科大学病理学講座 谷野美智枝教授 就任インタビュー

更新日:2019年8月3日

文責:旭川医科大学医学部医学科5年 綾谷 有美香


☆∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴.☆

Topics

 谷野美智枝先生 旭川医科大学病理教授ご就任お祝いを兼ねた医学生によるインタビュー

(1)ワーク編「細胞レベルで知れる面白さ」

(2)ライフ編「生きがいはすべて」

(3)アドバイス編「なんでも欲張って経験して!」

☆∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴.☆



大学の病理部での一枚。


■ワーク編(病理医は女性の職業としてもおすすめ)

・選択の動機

 元々は臨床医として北大第一内科で働いていました。臨床医として採取した組織やいろいろな治療をしたけど不幸にしてお亡くなりになってしまった患者様の病理解剖などを通して、病理に関わる機会が多く、病理は身近でした。臨床医として診ていた患者さんの身体の中で起こっていることを組織、細胞、遺伝子レベルで見て、明解な答えに導いてくれ、さらに治療に直結する病理に感動しました。また、病理検体を用いて肺気腫の発症メカニズムの研究に取り組んでいた際に、「呼吸器内科医」として病理の勉強をスタートさせるうち、面白さと奥深さを感じていました。そのうちに病理の教授から助教にならないかというお誘いをいただきました。内科を続けるか、病理に転向するか迷いましたが、呼吸器内科の上司に相談したところ、呼吸器病理が専門の病理医が少ないから是非やってみたらよいのではないかという後押しもあり、病理医に転向する決意をしました。


・診療科の特徴

 臨床での疑問、知りたいことに対して、病理医はミクロな視点から病気にアプローチし細胞・病理像を観察、病態を知ることができ、それを臨床にフィードバックして適切な治療に貢献することができる重要で大変やりがいがある仕事です。臨床は画像や血液検査結果などを通して病気の影をみることが多いのですが、病理は、それらの所見の理由付けとなる所見と臨床像を比較検討することで病態を深く理解できます。病理はイメージがつきづらい科かもしれないですが、患者さんを治療する臨床チームの重要な一員として、さらに治療の選択、予後の推測に関して司令塔の役割も果たしているのです。また、女性としてのメリットをいうと、外来や病棟での仕事はベッドサイドで行う迅速病理診断 (rapid on - site evaluation:ROSE)や病理解剖以外は、急な呼び出しは少なく、マイペースで経験を積むことができる働きやすい科だと思います。臨床バックグラウンドがあった上で、病理になる人も多く、私自身も臨床医からスタートしています。


・やりがいを感じる理由、大変なことなど

 繰り返しになりますが、臨床では予測になってしまう部分をもっと詳細に組織像、細胞像から病態を把握することができ、さらに病理検体から採取したDNAやRNAを解析したり、実験病理学的手法を用いて病気の本質に迫ることができます。臨床面と研究面どちらの要素も持ち合わせています。臨床面では、病理学的所見から疾患の本質に迫り患者さんのよりよい医療の提供に直結していることを実感しますし、研究面では臨床医学と基礎医学の中間的な立場であるからこそ、臨床検体を用いた研究を通して将来の医学・医療に役立つという大変やりがいがあり、楽しさを感じます。大変なことは、日本では病理医数が絶対的に不足していることもあり、広い守備範囲が求められます。広く深い知識が要求される部分は「楽・らく」ではありませんが、病理は「病理診断」が単独で独り歩きするものではなく臨床病理学的な総合的な判断ですので臨床医との連携のもと正しく、よりよい医療の提供を行えるように努力しています。


・現在取り組んでいる、取り組みたいと思っている仕事

 これからは遺伝子、血管・免疫細胞などの細胞周囲環境を含めた総合的治療が加速度的に進むと思います。病理組織から採取したDNA, RNAを用いた次世代シーケンスによる網羅的遺伝子解析を含めた新しい「分子病理診断」のニーズが目の前に迫っています。良質な病理検体があって正確な検査結果がでますので、患者さんの検査や治療が円滑にいくように臨床医、臨床検査部、薬剤部部、看護師さんたちと準備しています。臨床的な側面はもちろんのこと、大学教授としての仕事は、教育、研究も求められています。後進の育成と共に臨床病理学的検討、基礎、臨床の先生たちとの共同研究などを通じて、今すぐではなくても将来の患者さんのためになる研究を進めたいです。また、今は少ない女性教授の一人として、女子学生や女性医師の応援もしていきたいですね。


■ ライフ編

・ 趣味に関して

 二人の子供が高校生になる頃から始めたゴルフが趣味です。週末には友人や夫とゴルフを楽しんでいました。旭川に赴任してからは一度もゴルフができていませんが、旭川にも同期や友人がいて、今年こそは旭川でゴルフデビューしたいです。また、趣味とは言えませんが、旭川には昔からの友人も多いので、同じフィールドの友人、全然違うフィールドの友人と会っておしゃべりをしながら美味しいものを食べるのはとても楽しいです。


・生きがいについて

 生きがいを一言でいうのは難しいですね。全てですかね。

病理の仕事もそうですし、大学での教育・研究に関わることも、家族も、友人も、全てが生きがいですね。楽な仕事ではないけど、大変な中にも楽しさや新たな発見があって興味が尽きないので続けられます。仕事面でも私生活でも人と関わり、人に役立つことが生きがいですね。


■ アドバイス編

・若手に向けたアドバイスを。

 皆さんが選択した医学の道は大変ではあるけど、楽しくやりがいがあり職業だと思います。それぞれが興味を持って楽しいと思うことを頑張ってもらいたいです。私は臨床から病理へと興味があり楽しいと思う分野に欲張って進んできました。最近の学生さんたちは、試験、進級に追われ勉強が大変ですよね。でも勉強以外のことも是非欲張っていろいろ経験してください。いろいろな経験の中で、うまくいったり、いかなかったり、辛かったり、楽しかったり、いろいろな経験はすべてその後の人生の糧になります。いろいろなことを乗り越える力になります。それから、一人で抱え込まないで、友人、先輩、後輩、先生、家族などを頼ったりしてチームワークよく頑張ってください!

私はいつでも若者を応援しています!


たくさんお話をさせて頂いて、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。


■オフィシャルプロフィール(掲載時のプロフィールとします。)


旭川医科大学 病理学講座 教授 谷野 美智枝先生

・研究分野:人体病理学 / 実験病理学 / 呼吸器病理学

・略歴:

2018年度5月より現職

2012年度 - 2017年度:北海道大学, 医学研究院, 講師(腫瘍病理学講座

2008年度 – 2012年度:北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教

2003年度 - 2005年度:米国ワシントン大学 博士研究員

2002年度 - 2004年度:北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教

bottom of page