総会講演会①:協同する手段としてデザイン~実際のプロジェクト例を通じて

                  旭川医科大学 病理学講座 谷野美智枝

 福田大年先生(札幌市立大学 デザイン学部 専任講師)をお招きし、胆振沖地震による震災被害を受けた厚真町に対して行われた支援活動を通して協同する手段としての「デザイン」に関する御講演を頂きました。ご自身がプロジェクトリーダーとなり、厚真町の高齢者バイタル聴取やサポート(大手ライフケア企業との協同・協創プロジェクト)、PR支援プロジェクトを推進し、復興支援活動を行われ、その経験、経験からの学び、そしてデザインが持つ力についてご教授くださいました。

→先生のホームページはこちら http://www.futabafutaba.com/


 先生は、震災からの復興の現場において、「多様な人が関わる共同体で主体的能動的に展開発展可能なデザイン活動とは?」、「創造活動に敷居の高さを感じない場作りのためにデザインに携わる自分たちができることは何か?」と考えられました。そのなかで、ご自身の専門である協同・協創活動を促す手段としてのデザインの考え方・手技法を応用した「参加型デザイン」という活動を行いました。この「参加型デザイン」とは、多様な人々を巻き込み共同して地域活動を行うことで、災害現場の復興において協同を促す道具になり得るという考えに基づくものです。多様な利害関係を有する人々を能動的に参加させる方法や異文化のコラボレーションを効果的に行う手法で、多層的な社会課題の解決手法の一つと考えられています。厚真町が、人口不変で、千歳空港から近く、社会的人口が多い(ニセコ、ヒラフなどと同様)という特徴、町の建築様式などから文化を探ることから活動を開始されました。具体的な活動の一例は、PRグッズとして制作した厚真町のテープです。町の様々な特産品などがイラストで描かれ、ふるさと納税の返礼品にも外箱にテープとして使用されており講演会でも披露してくださいました。


 背景知識の違う専門家達が集まり、何か一つのものを作り上げるプロセスは産業革命以降の北欧で独自発展したそうです。現場や人を知る、利害関係者を巻き込む、得られたアイディアを可視化、具体的なものに落とし込む作業は地域の表面化していないニーズを探る、必要な支援を見つけることにつながるとのことです。先生がご所属されている札幌市立大学では、このような考えから研究者単位での連携を実施されており、包括提携、情報発信スキル向上研修会、PRグッズの企画製作などを行っておられるようです。 


 厚真町では復興イベントの企画やマネジメントなどの活動をされている中で、震災専門家、ボランティア、広報の関係者と厚真町民の軋轢が生じるというご経験をされました。ニーズを考えない厚真町外からの人々への対応に辟易とし、厚真町民が離れていったそうです。その一例として、北海道庁から出た「がんばろう」、「元気です」、「問題無い」といった言葉だったようで、まだまだ復興半ばの厚真町民にとって受け入れにくいものだったようです。「がんばろう」、「元気です」等を使わないメッセージ、もっと緩い言葉での発信が必要な状況であり、その解決策を探りました。厚真町内外の災害の状況の確認や、広告の専門家のご意見を仰いだり、先行事例との比較、関連分野との連動などを試み、最終的に、「ATSUMA LOVERS」という言葉をホームページ上で公開されました。更に多種多様な企業連携し広告やグッズ販売へと結びつけていく今後の企画予定もご紹介頂きました。


「デザイン」をツールとした先生のアイディアと行動は、震災後の厚真町において、現地に根付いた地域活動となり、町民を勇気づけ、活気を取り戻し、連携を促すことに結びつきました。私たちがこれまで持っていたアートとしての「デザイン」のイメージは自己表現でしたが、このご講演を拝聴し、デザイン作業としての深い意味とその強い力に気づかされた非常にインパクトを受けたご講演でした。